スピーカーはDream Worksの映画「メガマインド」でHead of AnimationだったJason Schleifer.
約10分と比較的短めではありますが、アニメーターとして働く上で非常に重要で、つい忘れがちなことを簡潔に話してくれているため何度聞いても楽しめます。
上手く意味を汲み取れているか不安ですが、英語が苦手な方のために日本語に訳した文も掲載しました(全文ではなく8割ほど)。Youtubeの自動英語字幕も良い精度なのでONにしてみるのもありかもしれません。
「メガマインド」を制作した際のテスト映像も見ることができます。恐らくここでしか見れない貴重な動画ですのでお見逃しなく。
「メガマインド」自体は日本では劇場での上映がなかったせいかあまり知名度がないのですが、個人的にはかなりお気に入りの作品です。現在はiTunesを始めNetflixやGoogle Playで見ることが出来ます。
以下、日本語訳です。
It’s not about movement. It’s about Character.
(翻訳は省略しますがこの後の内容を理解するために重要な「クモ」の話が出てきます)
-2:05
アニメーターとしてやりたい事はただ動きを作ることじゃない。Experienceや観客との感情的な繋がりを作りたい。
スクリーンに映っているキャラクターが本当に傷ついているということ、そしてまた別のキャラクターは本当に後悔している・・こういったことを観客に感じてほしい。
アニメーターからすると「動き」がこういった風に感じさせるのではなく、「キャラクター」がそう感じさせている。
私たちはキャラクターについて考えることによって、良いストーリーを伝えようとしている。これをいくつもの違った方法で行っている。
”Character’s Arc” – キャラクターのアーク
-2:40
まずはキャラクターのアークを考える。
基本的には伝えようとしているストーリーを通してキャラクターがどう変わっていくか、ということ。
悲しいところからスタートして幸せになる、とか。
クモの話では、意地悪で邪悪で、牙があってクレイジーな目のクモが居るというところから始まり、最後には潰されるという流れ。
メガマインドの場合はこういう風に簡単なArcを用いることは全然出来なかった。もう少しだけNuance(ニュアンス/微妙な違い)があるものを考え出す必要があった。
これでは90分間観客の関心を引くことはできないからだ。
私たちの人生は上がったり下がったりの波を繰り返す。もしこれを映画のキャラクターで出来たとしたら、もっと面白く、そして願わくば観客ともっと深いレベルで繋がることができる。
現在ではアニメーション映画を作るのに3-5年ほど年数が掛かる。これはストーリの始めから観客がスクリーンで見れるようになるまでの期間。
-3:30
アニメーターがアニメーションするときは映画の中のほんの一部の所にだけ集中している。
ショットによるが平均で1週間3.5秒掛かる。1週間この一瞬のことに集中する。クレイジーじゃない?
そしてアニメーターはその一瞬の場面だけじゃなく、映画全体で起こることも考えなければいけない。
“Moments are important” 一瞬一瞬が重要
-4:30
Every single moment in the film is important
なぜならその一瞬一瞬がアークに沿ってキャラクターを進歩、前進させていくから。
自分が演技していそれぞれの瞬間、自分がアニメーションしている一瞬一瞬がキャラクターを前へ進ませる。
そして最終的に観客が本当に楽しんでくれるという結果になる。
クモの話に戻ると・・
クモが潰されるとき、それは一番重要な一瞬。
“Moments have to be specific” – 一瞬一瞬はSpecific(特有、具体的)でなければいけない
-4:55
アニメーターがあるキャラクターについてするそれぞれの選択は「そのキャラクターが誰なのか」ということに関連している必要がある。
クモの話でいうと「特定のクモ」で「特定の死に方」をする。
しかし「現在」という時間軸、つまり映画の中だけで考えてはいけない。
加えて過去、「そのキャラクターがどこから来たのか」、「生い立ちはどんなものか」、「親との関係はどういう感じか」といったことや、未来も考えてなければいけない。
なぜならみんな「そのキャラクターがどこに行くのか」、「映画の後何が起こるのか」を知りたいから。
※この”Specific”という単語は仕事でも実際によく使われる言葉です。特有/具体的な というような意味で、 Generic/一般的な の反対と考えれば分かりやすいでしょうか。
無味無臭な特徴のない動きではなく、そのキャラクターがどういうキャラクターなのかが分かるような動き/仕草のことを言います。
※キャラクターを特徴づける”Specific”なアニメーションを付ける能力は、海外で仕事をする上では特に求められます。
メガマインドで作ったアニメーションテスト
-6:10
メガマインドにはタイタンとメトロマンという二人のスーパーマンがいる。
二人は全く同じ力を持っている。しかし物事に対して全く違った反応をする。
メトロマンは力とともに育った。なので彼は力を使うとき、何をすれば一番効率的で一番効果的でそして一番カメラに対して美しくなるか(なぜなら彼は適切な振る舞いが分かるから)を知っている。
なのでアニメーターたちはそういう風に彼を扱った。
一方でタイタンは力を授かったばかり。もし車を持ち上げてもバランスを崩したりする。メトロマンが全くしなかったようなことさえもしてしまう。
“Moments have to be Motivated” – それぞれの瞬間は動機づけられなければいけない
-7:05
External / Internal
基本的には2つ、物事を動かす力がある。
「外側から動機づけられる」か「内側から動機づけられるか」のどちらかである。
External Motivation(外側からの動機/刺激)は例えば・・
クモが潰されて死ぬ。これだけならExternal.
しかしInternal Motivation(内側からの動機/刺激)を持つこともできる。
例えばクモが居て、そのクモが足が潰しに来ていることに気付いて足を押さえて耐える・・そして潰れる。
同じスタート、同じ結果。だけどこちらの方がちょっとだけ面白い。何故ならクモのことが少し分かったから。「きっとクモは同じこと考えてるんだ・・たぶん足が嫌いなんだ」とか。
“Choose your Actions”- 行動を選ぼう
-8:06
Actions are … IMPORTANT
アニメーターはAnimatingするときにこういうことを基に動きを選んでいる。
アニメーターはキャラクターをアークに沿って進歩させる必要がある。非常に、非常に重要。
Actions are… SPECIFIC
行動はキャラクターの歴史に基づいている必要がある。選択した1つ1つの行動はキャラクターにとって特有(Unique)なことか。
もしそうじゃないなら、キャラクターは画面から飛び出し(?) 観客はキャラクターが選んだ選択を信じれなくなる。
Actions are… MOTIVATED
キャラクターは動機づけをされる必要がある。1つ1つの行動がキャラクターの内側から来ていて、それがそのキャラクター自身の選択だという風に見えなければいけない。
なぜこれらが上手くいくのか、そして何故アニメーターたちがこれを実際に映画の上に落とし込んだときに観客がキャラクターのことを信じれるか?
それは自分自身の選択をするときにみんなが一人ひとりしていることだから。
そしてみんなが人生に対処しているときにしていることだから。
“Think about your arc” – 自分のアークを考えよう
-8:53
自分が映画の中のキャラクターだと想像してみてください。
もしスクリーン上に居るとしたらどう見えますか?どんなパス/道にしたいですか?
アニメーターになりたい?なら名刺があるから後で取りに来てね。
車のメカニックになりたい?大統領になりたい?何になりたくてもいい。
あなたのアークを考えてほしい。そしてどういう瞬間が一番重要でアークに沿って前に進む助けになるかを考えてほしい。
選択できる重要な瞬間はたくさんある。
外に出て、あなたのクモを潰そう。
ありがとうございました。
(9/30追記)
講演の内容は以上となります。如何だったでしたでしょうか。
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